越智明美は1974年、鳥取県倉吉市生まれ。現在は高知県吾川郡いの町に住む日本画家。夫は日本画家の越智篤史。
高知の暖かい風土と自然の美しさに魅了され、その雄大な自然が育んだ素材を生かした制作活動を行っている。
主に支持体として使っているのは、高知県仁淀川流域で古くから製造されている土佐和紙(高知麻紙・土佐麻紙)。
越智の作品にしばしば使われる銀箔の硫化や様々なテクスチャを表現するためには、
より強靭な高知麻紙がなくてはならない素材となっている。
画材としては、高知の珊瑚職人の協力を得て独自の珊瑚末精製を行う。
高知の素材と越智明美について いの町紙の博物館Webサイト「和紙の現場を訪ねる 第4回」
また越智は銀箔の硫化によって作り出される玉虫色についての実験を重ね、制作活動に活かしている。
銀箔は経年変化により酸化・硫化が進むと、いわゆる「いぶし銀」となる。
この特性を活かし、銀箔を作品に使うことで、時とともに変遷する作品を楽しんでもらいたいと考えている。
銀箔は年月を重ねることにより
銀 → 金 → 青 → 紫 → いぶし銀
と変化していく。
銀箔の変化は、金色から茶色、黒という場合と、金色から紫を経由しての黒など、変化の工程もどうなるのかは環境に依る。ただし、越智の作品では、1年・2年で銀箔が変色しないように銀箔部分に専用コーティングスプレーを吹き付けてある。
いぶし銀、といえば京都の銀閣寺がイメージしやすいだろうか。建立当初は銀色に輝く華やかな見た目であったであろう銀閣寺だが、500年の時を経た現在では、ご存知の通りいぶし銀となった銀箔が、見る者に日本の侘び寂びを感じさせる趣あふれる外観と変化している。